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泥魚亭好日記 〈美しさを楽しみ夢を育てる〉



リスクを負う生き方

 エネルギービジネスプロデューサー講座が終了した。料金、開催時期、テーマ設定いろいろ問題点があったようで、毎回平均10人そこそこの受講者に終わってしまった。
 お忙しいなか、ご協力いただいた講師の方々には事務局の努力不足を陳謝したい。

 最後は京都大学公共政策大学院大学佐伯英隆特別教授にまとめの講義をお願いした。その中で、佐伯先生は、最近の日本人の行動原理にある「リスクを負いたくないから前向きなコトを何もしない」傾向に警鐘を鳴らしておられた。
 ホンノ数十年まで、日本人はどんな危険な場所であっても、企業戦士としてどんどん出かけていった。それが現在は”危険な匂い”がするところには誰も近寄らない。もしも危険な目に会うと、外務省からは「自己責任でやれ」と怒られるし、会社からは何故そんなリスクを負うことをした、会社に迷惑をかけたと処分される。
 その結果、例えば中国は軍隊を派遣してまでアフリカ中部の油田の確保を目指すが、その重要な地に日本人が一人もいないという状況が生れている。
 今の日本は、敵がいもしないのにむやみに恐れ、背の針を逆立てたまま丸まって死んだ振りをしているハリネズミのごとくである。

 日本人は何にそれほど恐れを抱いているのか。コンプライアンスなどという言葉によって脅迫観念が生れているのか。それとも固定化しつつある格差社会に希望を失ってしまっているのか。
大正時代芥川竜之介は、「漠然とした未来への不安」から自殺をしたといわれている。現代は毎年のように3万人を越える日本人が「未来への希望をなくして」自殺する。確かもう8年以上もこの状態が続いているらしいので、既に広島原爆の死傷者の数を上回る数の方々が自殺をしたことになる。友人の話によると日本の職場にうつ病の方が増えているそうだ。自殺予備軍の出現である。異常な時代である。

 芥川竜之介の不安は的中し、昭和に入ると恐ろしい軍国主義の国家が出現した。現代の絶望の先には、何が待っているのだろうか。欲望礼賛と利己主義と敗者切り捨ての民主主義に絶望し、自由などいらないから牽引してもらえる強いリーダーが待望され、誰もが予想もしなかった全体主義国家が出現するのかもしれない。
 
 目立つものはたたかれる。ホリエモン実刑の効果は、チャレンジする若者に冷水を浴びせ掛けることになった。国策として、法の隙間を縫って利益至上主義に生きる人間をつぶした。
 純法律的にはともかく、法律に違反したとして厳しい裁定を受けた。巨大な金額をごまかした日興コーディアル証券がお咎めなしで、それと比べると微罪であるホリエモンが極悪人のように裁かれる。ここには、国家としてどのような「正義」を主張しているのか、よくわからない。

 だからやはり、ハリネズミになるしかないのだ。目立たぬように、文句をいわずに、仕事にいそしむしかないのだ。国が勢いをなくするとは、こういう状態を指すのだろう。

 「愛と少しのお金とちょとだけ勇気をもって」(チャップリン)前進する、そんな前向きな、リスクを恐れない仲間を出来るだけたくさん集めて、諦めずにこの閉塞状況を破っていきたい。
by project_oij | 2007-03-28 14:24
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横山征次がOIJの理想をめぐる日々の想いを綴ります

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